鈴蘭のシャンプーを終えてから出掛けたのは、かかりつけの動物病院。実は今日は鈴蘭の避妊手術の日だったんだ。週の頭は下痢で体調を崩していたからどうなることかと思っていたけれどその後すっかり回復してくれたので、予定通りに手術を決行することにしたんである。


こまとナイトも去勢済みだけど、鈴蘭を避妊させるかどうかは悩んだ。鈴蘭の魅力のひとつである毛並みの輝きが失われるかもしれないこと、ホルモンバランスの崩れによってアレルギーが出る可能性、性格がおかしくなるというウワサ。色々と秤にかけたが、最終的には避妊によって病気を防ぐことができる可能性を重視して手術に踏み切った。


診察台に乗せられた鈴蘭は、しっぽを下げてぶるぶる震えている。ここ何回かの通院ではいつも兄たちと一緒だったせいなのか常にハイテンションだったけれど、自分一人だけでの診察となるといつものように診察台からダイブする元気も出なくなるらしい。手術は1時間ほどで終了するが、前後の処置や麻酔管理の時間がかかるので、16時半頃にお迎えに来てくださいと言われ、そのまま病院を後にした。


こまは去勢手術の後は相当落ち込んで、帰宅してからは自分からハウスにもぐってしまったし(そんな事は初めてだった)、痛さのせいかおしっこもウンチも2日間くらいずっと我慢していたもんだった。あんまりにもおしっこしないもんだからって心配になった私は病院に「もしかして尿道がなくなっちゃったんでしょうか?」なんてトンチンカンなことを質問したりもしたなぁ。


ナイトの去勢の時は、ブリーダーさんが一晩預かって面倒みてくれたのでそれほど心配していなかった。翌日対面したナイトはエリザベスカラーを自慢げに振り回しながら、全く変わりなく走り回っていた。かえってこまのほうが変わった武装をしたナイトに恐れをなしていた風だったなぁ。


では鈴蘭はどうか。明るく元気のある仔なので、ナイトと同じように平気の平左で戻ってくるような気もするが、私が鬼の形相をしていると本気で恐れをなして壁のかげに隠れてしまうようなところもあるので、案外こま並みに凹んでくるかもしれない。15時頃に麻酔から覚めたとの連絡を受けて、病院にお迎えに行くと、そこには半分ボーっとしながらひっきりなしに鼻を鳴らし続ける鈴蘭がいた。


先生によると、鈴蘭の子宮はだいぶ赤くなっていて、そろそろ初ヒートがくる頃だったようだ。先週の下痢で荒れていた腸も充血は治まっていたとか。そうか、開腹したからそんな事まで判るんだ。そして目が覚めてからは痛いようで、痛み止めを使ったがずーっと鼻を鳴らし続けているとのこと。家に帰って2時間ほどしてから水を飲ませ、吐かないようなら食餌を半分だけ上げるようにとか、しばらくは激しい運動をさせないようにとか、抜糸は10日から2週間後で、3日後に一度様子を見せに来てくださいとか細かい注意を受け、ピーピー鳴く鈴蘭をそーっと車に乗せ、そろりそろりと運転して自宅に連れて帰った。


助手席にくくりつけたキャリーバッグの中で、次第に頭がはっきりしてきたのか徐々に痛みが増してきたのか安心したのか、大音量で鼻を鳴らし続ける鈴蘭は、それでも元気を取り戻し始めている様子だった。不測の事態を心配したりという事はなかったが、やっぱり無事に済んでホッとした。