今日の帰宅は22時過ぎだった。これくらいの時間になると、玄関に入ったとたんに鈴蘭に「ワン!」と吠えられるのが常である。どうせ今日もそうなんだろうなぁと思いながら鍵をあけたけれど、意外なことに鈴蘭はピーともいわず、こまがケージの中で飛び跳ねる気配がするだけであった。


もしかして鈴蘭具合でも悪いんじゃないだろうか大丈夫だろうかあぁもっと早く帰れるはずだったのにと思いながらリビングのドアを開けると、そこにはしっぽをぶりぶり振って全身で再会を喜ぶ鈴蘭が。…っておい、何でお前ここにいるんだ?!?!


明かりを点けて目に入ったのは、至るところに散らばるティッシュと原型をとどめないその空き箱、齧られた植木鉢カバー、無残な携帯充電器、その他もろもろ。いずれも鈴蘭が今日一日を存分に楽しんだことがうかがわれる形跡ばかり。そして鈴蘭が納まっているべきケージに目をやると、扉が思いっきり全開になっていて、本来ならばそれが開かないようにしてあるはずの金属の棒が姿を消している。そいつは部屋の別の隅っこから発見された。そんなところに落ちてるなんてありえない。


状況証拠から察するに、鈴蘭はケージの扉を固定している金具を自分で抜いて脱出を果たしたとしか思えない。天井から脱出できなくなったと思ったら今度は錠前破りで脱獄か。一体明日から一体どうすればいいんだ。つーか、けなげにケージの中で留守番してる兄たちがあまりにも単純に思えてしまって不憫でならないんだけど。