おととしのこと。
↑で「折れたヒールを握りしめ」なんて書いたが、ホントは違うんです。そのヒールはもぎ取りたくても取れなかったんです。
その日大宮出張に履いていったのは、ヒールが高くかつ太い靴だった。デザインがシャープでお気に入りだったので好んで履いていたのだが、買った当初から左側だけが「歩くたびにふわふわするなぁ」と思っていた。で、あらためてよく見てみると実は左のヒールがキモチ後ろに、横から見ると「へ」の字に傾斜していることに気が付いた。でも多少の歩きづらさはあってもカッコイイ靴であったからそのまんま履き続け、当然ながら靴のシルエットは少しずつ「へ」から「〜」に変形するようになっていき、とうとう大宮出張の日に限界が訪れた。
その日は仕事が終わってから呑みに連れて行ってもらい、あんまりにも楽しくて気づいたら終電直前。急いで駅に向かい、旧型のノートPCと分厚い資料を抱え、酔ったシンデレラよろしくホームに向かう階段を駆け上っている時に、ヒールが私を裏切った。今までになかったような勢いで太いヒールがぐにゃりと曲がり、一瞬にして二度と元の形にはもどらなくなってしまったんだった。つんのめった私は何とか体勢を立て直して、左靴をパカパカいわせながらも必死にホームに登りつめたが時既に遅し、数秒の差で最終の新幹線が走り去っていくところだった。
両肩に不恰好な荷物を抱え、一目でわかるちぐはぐな形の靴を履いた酔っ払い女。びっこを引くような足取りでホームを後にして、せめて両方の靴の高さを同じにしたいと、無傷な右靴のヒールを何とかして折り取ろうと奮闘してみたが、憎憎しいほどに頑丈にくっついていやがってどーーーんなに叩きつけてもビクともしない。ならばありえない方向にひんまがったままの左のヒールをもぎとって、多少なりとも歩き易くしようと叩いたりねじったりしてみたが、こいつも頑固に靴底にへばりついたまま。あの時は、まだまだ人の多い大宮駅のベンチに座って、いっそベソをかいてたら誰か助けてくれないだろうかと情けない思いでいっぱいになったんだったなぁ。
結局その日は近くのリッパなホテルに泊まり(ビジネスホテルを探す気力は尽きていた)、お約束どおりの酷い二日酔いに悩まされながら翌朝の新幹線で帰宅。その途方もない靴は途中でお役御免になることもなく(したくてもできず)、我が家の玄関まで私の足を乗せて戻ってきた。そのままゴミ箱に直行となったのは言うまでもない。