4月に入ってから真夜中に帰宅する日々が続き、さすがに眠い。ま、帰宅できるだけ良しとしよう。


現在人間が一人しかいない我が家では、私が帰宅するまで犬たちは勿論ケージの中。トイレも食餌も我慢してさせてるわけだし、気がかりにならないわけがない。きっと退屈してるだろうなぁ、帰ったらちゃんと遊んであげよう、そう思ってはいるけれど現実問題として、睡眠不足が続いている上に1時過ぎに帰宅して翌日7持の新幹線に乗らなきゃならんとなると、30分も遊んでやったらギブアップだ。半分寝ながらナイトをまたケージに入れてベッドに倒れこんでしまう。


一緒にベッドで寝ているこまはその後も部屋を歩き回ったりなんだかんだとやっているようだけど、ナイトはちょっとかわいそうだ。だけど、「ナイトはベッドに上げない」「ナイトとは一緒に寝ない(寝るのは旅行の時など特別な場合のみ)」「人間が寝る時はナイトも寝る」というキマリがあるのでなんともしがたい。うーん。


そんな私が編み出した折衷案が、「ベッドのマットレスだけ床に引き摺り下ろしてそこで寝る」という方法。これなら「ベッドに上げない」法に抵触することもないし(だってマットレスだから)、「一緒に寝ない」法にも抵触しない(マットレスで寝る=床で直接寝るにも等しい=気分はキャンプ=キャンプなら一緒に寝てもいい)。「人間が寝る時はナイトも寝る」法にもぎりぎりで抵触しない(どうせわずかな睡眠時間だから昼寝と同じであるとみなせるし、これは犬とのコミュニケーション不足を補うためのやむをえない措置である)。なんて素晴らしい。何もかも満足できる完全無欠な解釈改憲だ!


ところが実際に運用を開始してみると、これがなかなかたやすくない。明かりが消えたら寝るだろうと思っていた犬たちは、暗闇でも目が利くという天与の才を活かしていきなりのプロレス開始である。弛緩しきった私のカラダの上でくんずほぐれつの大乱闘。どっちだかわかんないが、ぴょんと飛びのいたはずみで私の顔面に着地したやつがでた所で、その日はたまらずナイトをケージに追いやった。


翌日は明かりを消したらすぐさまナイトが布団の中にもぐってきた。しばらくすると私の肩にあごを乗せたままぐっすりと眠る気配がした。お、今夜は大丈夫そうだなと思ったんだけど、夜中の3時ごろ、ホントに何の前触れも無く戦闘開始の合図のラッパ(=こまの声)が高らかに響き渡り、いきなりトップギアでの激闘が始まった。完全に油断していた私のみぞおちに着地して逃げたやつと、腹と膝を蹴りつけてから追っかけてったやつが一塊になって戻ってきて、ダダダダっと私の喉の上を駆け抜ける。遠くでカラカラカラーンと犬の食器が鳴り響く。続いてカーテンがジャッと引かれる音、あぁ次はビリッという音が聞こえるぞと身構えたがそれがなかったのは幸いだったと言わねばなるまい。泣きそうになりながら明かりをつけると、テーブルの向こう側でからみあったまま揃って満面の笑顔を向ける犬たちと目があった。


今、これを更新しながら犬たちを眺めると、ナイトは床に引き摺り下ろしたままのマットレスに自分のクッションを引っ張ってきた上でうつらうつら。こまはお気に入りの隅っこでまどろんでいる。共働き家庭の制約から夜型にシフトした犬たちの夜中のプロレスパーティーを叱ることはできない。だけど、ご近所に迷惑をかけることになるから、やっぱりナイト君は夜はケージで寝てね。